アップル薄氷の500日
データ †
項目 | データ |
著者 | ギルバート・アメリオ |
出版 | ソフトバンク |
ISBN | 4797306157 |
ページ数 | 433 |
発売 | 1998/08 |
価格 | 2400円+税 |
サイズ(cm) | 20 |
感想 †

カバーの内側には次のように書いてある。
世界で最も創造的な企業、アップルの再建に挑んだ男が体験した綱渡りのリストラ。果たしてアップルは蘇ることができるのか?
果たして現在、アップルは見事に蘇った。 その全ては、この本の著者、Dr. ギルバート・F・アメリオがジョブズを呼び戻したことから始まった。
本書の原題は "On The Firing Line: My 500 Days at Apple"、戦いの最前線での500日、という意味である。 まさに、Apple CEOとしての2年弱は戦場であったのだろう。 アメリオがApple CEOに就任したのは1994年11月で退任は1997年7月。本書が出たのはその約1年後である(ちなみに拙著MSSもちょうど同じ時期に出て、本書とセールスランキングで死闘を繰り広げていた)。
アメリオがCEOに就任した1994年末。 前任のCEOであったマイケル・スピンドラーがなんとかモトローラ68040からPowerPCへの移行を完成させたものの、当時のAppleは儲けを出せる体質になっていなかった。 品質管理が不十分でリコールが多発したり、製品ラインナップを広げすぎて、フォーカスが定まらなくなったり。 高速なはずのPowerPCも、バスの設計が遅いままだったり、システムに古いコードが残っていたりして、68040からそれほどの高速化は果たせなかった(PCIバスを載せた次の機種で果たされたが)。
そのような時期に、荒波に次ぐ荒波を乗り越え、自社が買収されるのを避けながら、製品ラインを絞り、BeOSを買収するかと思いきや、NeXTの買収をまとめたら首をはねられた、というまさに波瀾万丈のCEOライフが描かれている。 結局、自分が呼び戻したジョブスに追い出されるところは、昔、ジョブスがスカリー(ペプシの社長)をAppleに呼んだら、ジョブス自身が追い出されたところに似ている。
しかし、とにかく、1995年ごろのAppleの首の皮をなんとか1枚つなげていたのは、アメリオの決断だったのだ。 しのぐべきときをなんとかアメリオがしのいだからこそ、その後のジョブズが攻勢に出ることができた。
アメリオ博士はどうも自慢たらたらで「才能のある私がどうしてこんな目に…」という感じの表現があちこちにあるが、あれだけの大きな会社も内部はこれだけゴタゴタしてて墜落寸前だった、ということがわかる貴重な一冊である。 iMacから始まり、Mac OS X、iTunes、iPodと続くApple復活劇の、幕の開く直前のころを知りたい方は、 ぜひ読まれるとよいだろう。
目次 †
- 幕あけ
- 冬物語 ー CEO就任
- 歩き回る影法師 ー 契約条件をめぐる泥沼
- じゃじゃ馬ならし ー 資金難の打開
- 天と地のあいだ ー 新世界には山あり谷あり
- 尺には尺を ー 戦略の決定
- まちがいの悲劇 ー たびかさなる判断ミス
- レッドモンドの二紳士 ー ビル・ゲイツとの直接交渉
- 手際よければ、すべてよし ー 最高幹部チームの形成
- 故意の骨折り損 ー 新製品のガイドラインづくり
- もつれた絹糸 ー 新しいOSの模索
- 人の心のなかの毒 ー マスコミ報道の裏側
- いいは悪い、悪いは悪い ー 度重なる暗いニュース
- 生きるべきか死ぬべきか ー BeとNext、究極の選択
- から騒ぎ ー 悲喜こもごもの業界イベント
- 忍苦の冬 ー リストラやむなし
- あらし ー 本性を現したスティーブ・ジョブズ
- シリコンバレーの商人 ー アップルを手に入れたがる人々
- 旅路の果て ー CEO解任のいきさつ
- 幕ひき ー 私がジョブズに託したもの